2009年11月11日

暗唱して記憶力を伸ばそう!

 「人間の脳は、使えば使うほどどんどん良くなる」性質があります。とても重要な学習能力の一つである記憶力も、どんどん使って鍛えることで、驚異的なほどにまで強化することが可能です。今回は、その方法について紹介したいと思います。

  大きな声で暗唱することは、記憶力を強化する最良の方法である
 思い出せば思い出すほど思い出す能力が発達するわけですが、暗唱することほど、この思い出す力をフルに使用する作業はありません。それも、体を動かしながら大きな声で暗唱すると、効果がさらに倍増します。
 それでは、その例をいくつか紹介したいと思います。


   俳句を覚えて暗唱する
 バイオリンの幼児教育で有名な鈴木鎮一氏の幼稚園では、記憶力トレーニングとして子ども達に毎日小林一茶の俳句を覚えさせ大きな声で暗唱させているが、小学校に上がってみんな成績優秀な児童になっているとのことです。

 鈴木鎮一氏は「はじめは十回くり返してもなかなか覚えず、いえなかった子も、二学期になると3,4回で覚え、三学期には、1回で覚えてしまう子も育ってきます。」と鈴木鎮一著『愛に生きる』で述べています。

 10回くり返さないと覚えることが出来なかった人が、1回で覚えられるようになったということは、単純に計算すると、記憶力が10倍になったことになります。そしてその場合、ただ速く覚えられるようになっただけでなく、長い間忘れないようにもなっているものです。


    外国語を覚えて暗唱する
 次に、トロイの遺跡を発掘したとして有名なシュリーマンについて紹介します。
 彼はほとんど独学で15カ国語をマスターし自由に話せたことでも知られていますが、彼の勉強法は意外と簡単で、「非常に多く音読すること」と「多くの文を大声で暗唱すること」だったとのことです。
 彼は、毎日あまりにも大声で音読したり、暗唱したりしたので、何度もアパートを追い出され引っ越さなければならなかったほどだそうです。

 貧しかった彼は若い頃から働かなくてはならず、まとまった時間がそれほど取れなかったので、昼も夜も少しでも時間を見つけては徹底的に暗唱をくり返しました。その結果、最初弱かった彼の記憶力は、1年後には強力に強化され「印刷された英語の散文20ページを、もしあらかじめ3回注意して通読していたならば、文字通りに暗唱することが出来た。」と、彼はシュリーマン著『古代への情熱』の中で述べています。
 ちなみに彼は、その語学力を活かしてオランダやアメリカで貿易などのビジネスをやり、ついには億万長者にもなっています。


     お経を覚えて暗唱する
 3番目に、池口恵観著『左脳で記憶すると数100倍損をする』「密教秘伝<イメージ記憶法>による驚異」に書かれていることをかいつまんで紹介します。

 池口恵観氏は、小学校時代は記憶力も学校の成績もそれほど良くなかったそうです。しかし、密教の修行を続けた結果、中学、高校時代には成績がとても良くなり、「覚えようと思って精神を集中して教科書を読むと、国語にせよ、社会、数学にせよ、どの教科書の何ページの何行目に何が書かれているかが、隅から隅までことごとく頭に入った。」と述べています。

 密教の場合、修行の仕方は結構複雑なのですが、その修行の重要な部分は、お経の一種である真言をひたすら唱えるというものです。言わばお経の暗唱です。

 池口恵観氏はお経を唱えるとき、「手で目まぐるしく印契(いんげい)を組みかえながら、口で真言を絶叫する。真言を唱えるなどというなまやさしいものではない。寺の大本堂が揺れんばかりに、文字通り絶叫するのである。」と述べています。

 また、「私は経を覚えるのに、五感をフルに活用していた。経文を目で追い、それを口に出していう。同時に自分や父の読経の声を耳で聞く。さらに手は絶えず印を組みかえる。」とも述べています。
 池口恵観氏は、「密教秘法のケタ外れの記憶力の秘密の1つは、思い出す力が抜群に良くなるという点にあるのだ。」と述べていますが、これは、激しいほどの長時間に渡るお経の暗唱が、思い出す力を強力に強化している結果だと言えるでしょう。


     暗唱を習慣化しよう!
 今まで紹介したことから、記憶力を強化する最良の方法は「体を動かしながら大きな声で暗唱すること」だということが分かってもらえたかと思います。
 先に紹介したように、暗唱する材料は、俳句でも、外国語でも、お経でも何でも良いわけです。ですから、学生の皆さんには、英語の基本文を大量に覚えて大きな声で暗唱し、記憶力を強化することをお勧めします。

 英文を大量に覚えて記憶力を強化し、覚えた英文を利用して英作文練習をすると、英語が話せるようになります。これは、私の知っている中で一番効率の良い英会話習得法です。


 暗唱して記憶力を強化することは、LD(学習障害)やADHD(注意欠陥・多動性障害)の解決や、高齢者の認知症の予防や改善にも有用である
 暗唱して記憶力を強化することは、学力を向上させることにとても有用であるだけでなく、最近問題になっているLDやADHDの解決や高齢者の認知症の予防や改善にも有用なものです。
 東北大学の川島隆太教授の研究によって「音読が脳を活性化させる」ことがわかっていますが、暗唱することは、音読の何倍も脳を活性化させるものです。

 ADHD(注意欠陥・多動性障害)で、1分も暗唱することが出来なかった子でも、励ましながら毎日何回も暗唱させていると、暗唱できる時間が1分、2分、、5分、、10分と次第に増えていくものです。つまり、集中力がついてくるのです。
 他の勉強に比べて暗唱は、LDやADHDの子ども達にとっても取り組みやすいようです。一緒に早足で歩きながら暗唱すると結構喜んでやるし、幼い子どもでしたら、手をつないで歩きながらやると「キャッ、キャッ」言いながらも楽しそうに暗唱してくれるものです。

 ストップウォッチで暗唱できる時間を計り、集中できる時間が増えたことを子どもに知らせたりすると、とても大きな励みになります。


 歌を歌ったり話をしたりすることも思い出す作業の一つであるが、暗唱の方が効果は遙かに大きい
 歌を歌ったり話をしたりすることも、思い出す作業の一つです。高齢者でしたら、毎日楽しく歌を歌ったりおしゃべりしたりしただけでも、認知症の予防・改善になるものです。
 しかし、外国語の基本文を覚えて暗唱すると、「覚える能力」と「思い出す能力」の両方を鍛えることが出来る上に負荷が大きいので、認知症の予防や改善に遙かに効果があるのです。


     訓練された人に実際に会ってみよう!
 記憶力に限らず全ての人間の能力は、鍛えれば鍛えるほどどんどん良くなるものですが、それを実行するためには、訓練された人に実際に会ってみることも良いものです。
 身近で確認できるものとしては、計算力があります。珠算の有段者にもなると、驚異的なスピードと正確さで計算することが出来るものです。
 能力開発に興味のある方は、ぜひ一度は珠算の有段者が計算するところを見学し「人間は訓練するとこれほどまでに能力を鍛えあげることが出来るんだ」ということを実感して欲しいと思います。


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Posted by ガロア at 16:39│Comments(5)教育・福祉
この記事へのコメント
関連サイトの紹介です。

文章の音読・朗読で脳を鍛える
寺子屋の音読・素読み教育
http://goodbrains.net/sanou/rodoku.html
Posted by ガロア at 2011年07月01日 19:04
言葉の森作文ネットワーク
 大人が暗唱の練習をすると、毎日10分の練習で頭がどんどんよくなっていく実感があると思います(笑)。
http://www.mori7.com/index.php?e=1404
http://www.mori7.com/index.php?e=1405
http://www.mori7.com/index.php?e=1406
http://www.mori7.com/index.php?e=1407
Posted by ガロア at 2012年01月17日 21:29
世にも不思議な暗算王 Human Calculator (1 of 3)
https://www.youtube.com/watch?v=FW0c4UcM7kk

世にも不思議な暗算王 Human Calculator (2 of 3)
https://www.youtube.com/watch?v=68yGYvMxQKI

世にも不思議な暗算王 Human Calculator (3 of 3)
https://www.youtube.com/watch?v=tpkZrUFiaLE
Posted by ガロアガロア at 2018年12月22日 20:06
東大生クイズ王が「暗記」のポイントを解説します。
https://www.youtube.com/watch?v=w20nAgVoch0
Posted by ガロアガロア at 2018年12月22日 20:53
英単語暗記法 留学経験なしでIELTS8.0, TOEFL iBT103, 英検1級, TOEIC 990
https://www.youtube.com/watch?v=_--jvhtt9v8
Posted by ガロアガロア at 2018年12月22日 20:58
 
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