「負荷」かけると、肉体も頭脳も能力が伸びる

ガロア

2021年06月11日 13:45

「負荷のかけ方」についてもっと知ろう! 
 ガロア通信第12号のテーマは「負荷」です。 (この文章は、2010年1月発行の「ガロア通信」からのコピーです。)
 「負荷」とは、読んで字のごとく「荷を負うこと」とか「負担」といった意味です。
 体を横にしているより立っている方が負荷が大きく、歩くより走る方が負荷が大きいものです。また、簡単なクイズより、難しいクイズの方が脳への負荷が大きいものです。
 この「負荷のかけ方」を知っていると、効率よく体や脳を鍛えたり、健康を増進したり、老化を遅らせたりすることができるのです。 
 ガロア通信第12号では、この「負荷のかけ方」について説明したいと思います。

能力に応じた負荷をかけると集中力が増し、学習効率が非常に良くなる!
 脳科学者として現在マスコミなどから脚光を浴びている東工大大学院の茂木健一郎教授は、「脳を活かす勉強法」の極意の一つに「集中力」をあげ、次の3つが重要な要素だとしています。

速さ ― 作業のスピードを極限まで速くすること
分量 ― とにかく圧倒的な作業量をこなすこと
没入感-周囲の雑音が入らないほど夢中になること

 勉強でも仕事でも、ゆっくりやるより速くやった方が負荷が大きくなります。また、分量も少しやるよりたくさんやった方が負荷が大きくなります。
 そして、負荷が大きくなると、どうしても今やっていることに意識を集中せざるをえなくなってしまうのです。
 そしてさらに、集中して仕事をするとその仕事がはかどるだけでなくその仕事をする能力が向上していくのです。
 勉強する場合でも、集中して勉強するとたくさん学べるだけでなく、学習能力そのものが向上するので、勉強することを習慣づけて継続していると、より短い時間でより多くのことを学べるようになってくるのです。

速さ
 英語CDを聞くときも、同じCDを何度も聞いていると飽きてきて、聞きながら別のことを考えたりしがちです。しかし、2倍速3倍速と速くしていくと聞きづらくなるので、聞き逃すまいと意識を集中するようになります。そして、意識を集中すると聞いたものがより頭に入りやすくなります。それだけでなく、2倍速で聞いた場合は、聞くのに必要な時間が半分ですみます。しかも、速く聞いたことにより頭の回転が速くなり能力開発にもなるという訳です。一石二鳥どころか一石三鳥ともなるのです。

分量
 大抵の英単語には、その意味に対応する日本語の訳が複数あるものです。初心者は英単語の意味を1つだけ覚えようとすることが多いですが、慣れてきたら、意味を一度に2つずつ覚えるようにし、さらに慣れてきたら3つずつ覚えるようにすると集中力が増し覚えやすくなるものです。
 英語の短文を覚えるときも似たようなことが起こります。
 最初は、文を1つだけくり返し書いて覚えた方が覚えやすいものですが、長期に渡ってコツコツと短文を覚え続けていると、その作業に慣れてくると同時に記憶力が良くなって能力に余裕が出てくるので、勉強しながらも別のことを考えたりするようになってしまいます。

 そのような場合、一度に2つの短文を覚えるようにすると、負荷が増えてまた集中せざるをえなくなるので、短文を覚えるのが速くなります。さらに勉強を続けていると、脳のキャパシティ(容量)にさらに余裕が出てきてまた集中力が落ちてきます。そんな場合は、一度に3つの英文を覚えるようにするとまた集中できるようになります。このように、一度に書いて覚える英文を4つ、5つと増やして負荷を増やしていくことで、集中力を維持しつつ同じ時間で学ぶ量を増やしつつ、集中力と記憶力を強化することが出来るのです。
 
 書く回数で言えば、英語の短文を書いて覚える場合、最初は10回も20回も書く必要があったりするものです。しかし、慣れてくるに連れて次第に書く回数を減らしていくと負荷が増え、集中力を維持しつつ同じ時間で学べる量が増え記憶力も強化されていきます。これを何年も続けていると、1回書いただけで覚えられるようになり、仕舞いには書かなくても読むだけで完璧に覚えられるようにさえなってくるものです。
 単語を覚える場合でも全く同じ事が言えます。大学受験のための勉強なら、書かないで読むだけで覚えるようにするのも効果的です。

便利で楽な生き方ばかり選んでいると、自分自身の中にある能力を失うことになる!
 名古屋大学の池内了教授は、「便利さとは、自分自身の中にある能力を失うことだ」と述べています。
 「便利だ」「楽だ」ということは、負荷がより小さいことを意味します。そして、負荷がより小さいということは、ガロア通信第3号の「体の使わない機能・能力は衰える!https://garoa.ti-da.net/e2883851.htmlで述べたように、体の機能や能力が低下してしまうことを意味するのです。
 例えば、車に乗ると確かに便利ですが、歩くことが減ってしまうと足腰が弱くなってしまうということです。

 学習面でも同じです。
 ほとんどの生徒達は、授業で習ったものをすぐその場で覚えようとせず、後で時間をかけてゆっくりと覚えようとします。確かにその方が楽に覚えられるものです。しかし、楽をする、つまり脳にかかる負荷を減らして覚えようとすると、記憶力は強化されないのです。
 ですから、今は出来なくても、授業中に習ったことはすぐその場で全て理解し覚えようと努力することが大切です。これを実行している生徒はしだいに理解力と記憶力が強化されてきて、だんだん授業中に学んだものは授業中で全て理解し覚えられるようになってくるものです。

 ただ、一度覚えたものでも、復習しないと忘れてしまうものです。ですから、家庭学習として授業中に学んだものを復習することはとても大切なことです。
 授業が終わると部活だけをやり家でもあまり勉強する時間がないのに成績が良い生徒がたまにいます。そういう生徒は理解力や記憶力が鍛えられていて、学んだものを授業中だけでほとんど理解し覚えてしまうことが出来ているのです。
 一度理解し覚えたものは、復習するにもあまり時間がかかりません。それで、家庭学習の時間が短くても、とても良い成績を取ることが出来るのです。

適度に負荷をかけることは楽しいことだ!
 子ども達が重いのを持ったりかけっこをしたりして喜んだりするように、適度に負荷をかけることは楽しいものです。ゲームでも、どんどん難しい課題をクリアしていくことは楽しく、簡単すぎるゲームは楽しくないものです。簡単すぎる課題をクリアしてもドーパミンは分泌されないが、難しい課題ほどクリアしたときにはドーパミンがたくさん分泌されるからです。

 ドーパミンとは、快の感情や意欲、学習などに関わる神経伝達物質で、難しいクイズが解けたときや、困難な課題をクリアできたとき、ほめられたときなどに脳の中に分泌され心地よさを感じさせるホルモンです。

 勉強も、嫌々ながらやっているとドーパミンは分泌されませんが、自分から進んでいろんな課題に挑戦しながらやっているとドーパミンが分泌され、楽しく勉強できるようになります。そして、結果的には成績も伸びて学習能力も向上し、楽しく勉強できるようになる訳です。
 ですから、勉強はダラダラやるのではなく、全力投球してやるようにしましょう。

負荷のある生活をしよう!
 普段の生活でも、何か目標を見つけては挑戦して負荷をかけるようにしていると、生活に張りが出て充実した生活が送れるようになります。
充実した生活は、体の細胞を活性化させ病気に対する抵抗力を強め、老化をも遅らせてくれるものです。 
 ただ、負荷を増やすと疲れるものです。疲れたら休むこともとても大切なことです。

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