21世紀型の教育改革を望む

ガロア

2012年07月17日 20:57

 これは、10年くらい前に私が新聞に投稿したものですが、再度ここに公開して、真の教育改革の必要性を訴えるものです。

     21世紀型の教育改革を望む
 現在教育改革が行われているが、それはまだ21世紀の情報化社会に十分対応しているとは言い難い。それで、あえて現在の教育制度と学校の改革すべき点について訴えていきたい。

     入力型教育だけでなく出力型教育にももっと力を
 一つ目は「入力型教育だけでなく出力型教育にももっと力を入れるべきだ」ということである。現在産業界では、起業家やリーダーシップのある人材が、求められているし、情報化社会では情報の中身を創り出せるような人材が、必要とされている。だが、現在の学校ではそういった人材の育成が非常に難しい状況にある。現在優秀な高校生の多くが進学校に進学しているが、進学校では、普通高校よりも授業時間数が多く学習量も倍近くある。それで生徒たちは、与えられたものをこなすだけで精一杯で、他のことをする余裕があまりない。これでは受動的になるだけで、起業家や情報の創造者になることは難しい。なぜなら創造するということは、入力ではなく、出力であり能動的なことだからだ。入力型教育に偏り過ぎているのは、何も進学校だけではなく普通高校などでも同じである。
 日本では大学でさえも、教室では講師が一方的に授業が進め、学生たちはただ受動的に講義を聞き流しているだけである。小・中・高と、幼少のころから受動的で入力型の教育しか受けて来なかった学生たちには能動的に出力するための能力が育っておらず、大学でも、そういう訓練がなされていないからである。

 出力型教育と言ってもピンとこない方も多いと思うので、その例として「テーマ学習」について説明しておきたい。 
まず、個人あるいはグループで、学校の授業に関係なく好きなテーマを一つか二つ自由に選ぶ。そして、本やインターネットなどで調べてもいいし、歩き回って調査しても、自分で実験しても、良く知っている人から習ってもいいから、とにかく自分のテーマについて理解を深め、まとめていく。そして定期的に中間報告も行う。学期末には文書や図表などを使って発表会を開き質問を受け付ける。テーマは学期ごとに変更してもいいが、同じテーマでずっと継続しても良い、といったようなものである。
 情報化社会に対応できるような人材を育てるためには、このような出力型教育を小・中・高・大学で本格的に行うべきである。

     算数・数学・英語は、学年制の廃止を
 二つ目は「せめて算数・数学・英語だけは、学年制を廃止すべきだ」ということである。
 現在学校では、実に非効率で弊害の多い学習指導が行われている。算数・数学・英語は積み重ねの教科で、基礎の部分が十分できていないとその後の学習が困難になるという特徴がある。つまり1年の教科書が分からないと2年の教科書が分からず、2年の教科書が分からないと3年の教科書を理解することはできないということである。しかし学校では、3年になると、たとえ1年、2年のが分からなくても3年の教科書を教えるのである。生徒が授業を理解していようといまいと関係なく、教師は授業を進めていかざるを得ないのだ。

 ここで言っておくが、かけ算が分からないとわり算は絶対にできない。それにもかかわらず、たとえかけ算ができなくても、時間が来るとわり算を教えるのである。そのため、授業についていけない生徒たちは、授業中自分自身を押し殺して、ただ無駄に時間を過ごさざるを得ない。そしてそれが毎日毎日、しかも小学、中学、高校と10年以上も続くのである。その結果学習意欲のない無気力な生徒たちが数多く育てられている。何という大きな社会的損失であろうか。何よりも当の生徒たちが気の毒でならない。このことが学級崩壊や、いじめ、不登校の大きな原因の一つにもなっているのではあるまいか。

 それから、基礎がしっかりしていないために方程式の計算ができない高校生も少なくないが、基礎から勉強していけば小学生でも方程式の計算はできるようになる。それなのに現在の教育制度では、つまずいてしまっている生徒たちをどうすることもできないでいる。多くの優秀な人材をこのように見捨てざるを得ない学年制は1日も早く廃止し、生徒一人一人がその習得度に応じて学習できるような制度をつくるべきである。言っておくが、基礎から順序よく勉強していけば、すべての生徒が今よりも遥かに高いレベルまで学習できるのである。

     試験と評価制度の改革を
 三つ目は「試験と評価の仕方を改革すべきだ」ということである。
 現在学校では、試験は実質的には生徒間に優劣を付けるために行われているにすぎないので、試験後の補習などはあまり行われていない。情報化社会で生き抜く力を付けるためには、その子が持っている可能性を最大限に引き出してやることが必要である。だから試験は、その生徒が学んだところをどの程度理解し身につけたかをチェックできるように作るべきである。そして、試験の結果弱点が見つかれば必ず補習し、十分に習得してから、次の段階の学習に進むようにするのである。

 理想的には、現在の中間テストや期末テストは廃止し、英検や数検などを学校用に改良して百ぐらいの級に分類した検定試験をつくり、年に5、6回は試験を受けられるようにしたらいいと思う。そして「英検二級以上を取った人は大学受験の時に英語の試験を免除する」といったことが現在でも一部の大学で行われているが、新しい検定システムも大学入試に本格的に活用すれば、受験生の負担もかなり軽減されるのではないだろうか。

 最後に、日本の将来のために、そして何よりも生徒たち本人のために、一日も早く21世紀型の教育改革を望むものである。世論の盛り上がりを望みたい。

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